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□ いの健ニュース


第30号(2010年7月1日発行) ※PDF版はこちら

第6回労働安全衛生中央学校に行ってきました

 5月29~30日に京都で開催された「第6回労働安全衛生中央学校」に参加してきました。
 開校講義は「働くもののいのちと健康を守るたたかい」でした。私が受講したのは、第1講義「労働安全放棄と健康で安全な職場作り」、第3講義「職場のメンタルヘルスと職場復帰」、第4講義「頸肩腕・腰痛などの筋骨格系疾患の予防」、第6講義「メンタル不全、パワハラをなくす職場づくり」とミニシンポでした。
 現代労働者の健康問題の背景は、人員の削減や正規労働者の非正規化、長時間労働、成果主義賃金など、労働環境の崩壊から仲間意識の低下と心の病気が増加していることです。これらは労働組合の役員をしていれば肌身を通じ実感しているところです。
 日交で昨年から本格実施された安全衛生委員会の充実と職場における健康被害の予防、発生したときの対応と再発防止について集中して学習してみました。
 時代の移り変わりから労働者の心身の疲労や健康被害が増加、特に心の病や自殺が増加しています。労働組合として労働者の健康を守る取り組みは、過重労働の軽減と規制、労働災害の予防、安全衛生に対する教育と健康診断の受診結果の分析・改善策など多岐にわたっており、労使で取り組みをするには予算化や原資の確保も重要で、要求や交渉も重要になると実感しました。
 講義を受ける前は、心の病=うつ病と思っていましたが、精神疾患には多くの種類があり、うつ病の中にも代表的三種や新型や季節性など、多くの型があることを知りました。また、それぞれに治療方法や復帰支援方法が違うことも学習し、完治することなく再発する可能性を秘めていることも知りました。
 頸腕の有訴者やうつ病発症者はストレスの多い職場が多いことは認識していましたが、現代の医学で原因が解明されていることは驚きでした。働くものの代表として労働者の身体的負担をなくす、精神的負担をなくす、疲労の回復と対策を取ることが、職場の健康破壊を少なくさせる第一歩であると思います。
 うつ病や精神疾患は特殊な病気ではなく、誰でもなり得る病気である。いざ、組合員が発症したらちゃんと対応できるか、現状では不安が残ります。記憶は薄れていくものですから、定期的に学習を深め、知識と活動のレベル向上を図っていきたいと考えています。
 貴重な学習会に参加させていただいたことに感謝申し上げます。

(報告/宮城一般自交支部鷲尾順章)

労災申請/09年度厚労省報告
精神疾患に関する労災申請、初の1000件超

厚生労働省が6月14日に「09年度労災申請・認定状況」を公表し、
1 「過労死」等事案の労災補償状況
(1)請求件数は767件であり、前年度に比べ122件(13.7%)減少。(2)支給決定件数は293件であり、前年度に比べ84件(22.3%)減少。(3)業種別では請求件数、支給決定件数ともに「運輸業,郵便業」に分類される「道路貨物運送業」が最も多い。(4)職種別では請求件数、支給決定件数ともに「運輸・通信従事者」に分類される「自動車運転者」が最も多い。(5)年齢別では請求件数は50~59歳、支給決定件数は40~49歳が最も多い。
2 精神障害等事案の労災補償状況
(1)請求件数は1136件であり、前年度に比べ209件(22.5%)増加。(2)支給決定件数は234件であり、前年度に比べ35件(13.0%)減少。(3)業種別では請求件数は「医療,福祉」に分類される「社会保険・社会福祉・介護事業」、支給決定件数は「建設業」に分類される「総合工事業」が最も多い。(4)職種別では請求件数は「事務従事者」に分類される「一般事務従事者」、支給決定件数は「販売従事者」に分類される「商品販売従事者」が最も多い。(5)年齢別では請求件数、支給決定件数ともに30~39歳が最も多い。としています。
これに対し、6月15日付の毎日新聞では、「精神疾患の労災認定は~、申請が急増している中、認定は減少しており、認定のあり方に疑問の声も出ている。」とし、以下のような記事を載せています。

厚労省は積極認定を/「ストレスの雨」悪循環を断ち切れ

厚生労働省が14日公表した過労死・過労自殺の09年度のまとめは、精神疾患での労災請求が1000件を大きく上回る結果となった。うつ病など心の病に対する認識が社会的に広まっていることを差し引いても、職場の異常事態を警告しているといって過言ではない。
「ストレスの雨が降る」。カウンセラーや精神科医がよく使う言葉だ。職場内で一人でも、うつ病など心を病む事態になった場合、その職場に働く多くの人が同じようなストレスを感じているという意味だ。ストレスの原因は、長時間労働の横行やパワーハラスメント(パワハラ)、仕事上の過大なノルマなどで、認定理由でも多くを占めている。こうしたストレスに多くの労働者が日々さらされている。
一方、精神疾患の労災認定率は下がる傾向にある。過労死問題に取り組む弁護士らは、理由の一つに発症時期との関係を挙げ、「ハードルが高い」という。発症が仕事の失敗といった小さな出来事がきっかけだと、パワハラなどを受けて症状が悪化しても、発症時点が重視され、仕事との関係が薄いと労災が認められないケースが多い。仕事を続けるうち、症状が悪化しているのに救済されない。
さらに、労災とされないことで、職場がチェックされず長時間労働などが放置され、ストレスの雨の中で新たな被災者が出るという悪循環を指摘する。精神疾患の労災は、回復に時間がかかり、社会に与える影響も大きい。厚労省は積極的に労災を認定して、企業文化を含め過労死、過労自殺の背景にメスを入れるべきだ。(東海林智)


①脳血管疾患及び虚血性心疾患等(過労死等)の労災補償状況     (件)
区 分
年 度
01
02
03
04
05
06
07
08
09
脳・心臓疾患 請求件数
690
819
742
816
869
938
931
889
767
認定件数
143
317
314
294
330
355
392
377
293
うち死亡 請求件数
319
335
336
315
318
304
237
認定件数
58
160
158
150
157
147
142
158
106

②精神障害等の労災補償状況     (件)
区 分
年 度
01
02
03
04
05
06
07
08
09
精神障害等 請求件数
265
341
447
524
656
819
952
927
1136
認定件数
70
100
108
130
127
205
268
269
234
うち自殺
(未遂を含む)
請求件数
92
112
122
121
147
176
164
148
157
認定件数
31
43
40
45
42
66
81
66
63

 

学習/政策制度要求解説連載(第2回)
「第2 労働安全衛生について」

「働くもののいのちと健康を守る政策・制度要求」の解説の2回目は、「労働安全衛生について」です。
原文は、全国センターのホームページで見て下さい。

労働安全衛生とは、労働者が働くことでケガや事故にあわず安全が確保されることで、衛生(生きることを守る・生活を守る)は心身の健康が守られることを意味します。これは人間である労働者を雇い働かせる事業者(主)の責任と義務であり、労働者には権利です。このことは憲法と労働者保護法である労働基準法・労働安全衛生法・労災補償法などで定められています。

すべての労働者の安全と健康の確保を
労働安全衛生法の目的は、すべての事業所において労働者の「安全と健康の確保」と「快適な職場環境の促進」(労働条件改善)であり、事業所の責任者である事業者(主)に労働災害や健康障害を防止するための措置と事業所の労働安全衛生体制の確立を求めています。
この労働安全衛生体制は正規雇用労働者だけでなく、増大させられてきた非正規雇用労働者(派遣、有期契約、パート、臨時、請負など)、また、事業所規模50人未満の中小零細企業労働者、それに個人請負・契約など現行法では労働者性が問われる実質労働者を含むすべての労働者とすべての事業所に確立されなければなりません。
しかし、いま大きな問題は非正規雇用労働者、中小零細企業労働者、実質労働者や名ばかり管理職、外国人労働者・研修生などの労働者は労働安全衛生体制が全く不十分な状況です。このため全国センターの政策・制度要求ではすべての労働者とすべての事業所に労働安全衛生体制の確立、それに健康診断と事後措置、保健予防体制の拡充を求めているのです。

すべての事業所に労働安全衛生体制を確立する
雇用形態が正規・非正規、また、事業所規模が50人以上・未満に関わらずすべての事業所に法基準にもとづく労働安全衛生の専門家(総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医など)の配置と労働者参加の安全衛生委員会設置による労働安全衛生体制の確立を求めています。
そのために法制度上の不備を改善し、早急に問題の多い非正規雇用労働者、50人未満事業所の労働者、実質労働者、外国人労働者・研修生などのいのちと健康を守る労働安全衛生対策を早急に立てることを要求しています。
それには非正規雇用労働者が参加する安全衛生委員会の確立や労働者の意見反映できる体制、50人未満事業所でも労働者参加の安全衛生委員会の設立など実質的にすべての労働者が労働安全衛生体制に組み込まれいのちと健康が守られる事業所をめざせる法整備と行政指導が必要です。

ILO155条約の批准と労働安全衛生体制の強化
日本はILOの187号条約(労働安全衛生の促進的枠組み条約)を批准し、これを活用した労働安全衛生の活動は前進をしています。しかし、ILO155条約は批准していません。
この条約は、健康とは安全確保や就業に関連した疾病にかかっていないことだけでなく、安全と衛生を確保するために、身体的、精神的な健康に影響を及ぶす就業上の要素をなくし、予防することの重要性、そのために十分かつ適切な監督制度と法令違反に対する必要な制裁を求めています。そのためこのILO155条約を批准して法整備をはかり、すべての労働者の安全と健康が確保される権利保障を法制度上確実なものとするとしているのです。

元請事業者の親企業責任をすべての産業・事業に
現在元請事業者の下請企業・労働者の安全衛生の責任を明示されているのは建設・製造業中心です。現在親企業のリストラ政策で事業の下請化、委託化、外注化、アウトソーシングがあらゆる産業で広がり、そこで働く労働者のいのちと健康が脅かされ労働安全衛生体制が問題となっています。
そのためにすべての産業、事業で元請事業者の親企業としての責任を明確にし、下請・関連の労働者の労働安全衛生、特に安全衛生教育、健康診断と事後措置、危険業務のチェックと予防を確実に行なわせる安全衛生の管理体制の拡充と行政指導の徹底を求めています。

派遣労働者の労働安全衛生の確保を
この間急増して問題の多い派遣労働者の安全と健康確保の緊急の措置を求めています。派遣労働者に対して労安法・派遣法などの法で定められた労働安全衛生に関わる施策を派遣先・派遣元の企業責任で実質確保できるよう労働行政指導を強めること。特に派遣先企業の労働者の労働安全衛生の責任を明確化し強化する法改正を派遣労働者を保護し権利確保できる内容と合わせて行うことを要求しています。

すべての労働者の健診、保健予防体制の拡充
すべての労働者の安全と心身の健康確保のために労働安全衛生法に基づく定期健康診断・特殊健診と事後措置を徹底し、特定健診・保健指導を理由に現行制度を低下させないことを求め、それに不十分で不備の多い非正規雇用労働者、50人未満事業所労働者などのすべての労働者の健診と事後措置、予防措置を抜本的に改善することを求めています。
この間労働者の運動もあり出されてきた労働安全衛生関係の通達・指針(特に過重労働防止、メンタルヘルス対策、労働時間管理など)をすべての事業者(主)、事業所、労働者に徹底し、すべての労働者の心身の健康を守ることを強く要求しています。
それに、労働者の安全と健康確保の予防指針は、ILOなどの国際労働安全衛生基準をふまえたものであること、また、もっとも古く今日も重大なじん肺を根絶する内容の要求もここで指摘してあります。

(全国センター理事佐々木昭三)

次回の「第2回いの健幹事会」は
東北セミナー実行委員会と合同開催

日 時: 7月20日(火)
会 場: 県労連2階会議室
  18時15分~19時半/第2回東北セミナー実行委員会
  19時半~20時半/第2回いの健幹事会

東北セミナーの第1回実行委員会では「いの健ニュース第29号」でお知らせしたように、実行委員会の体制も決まり、次回はセミナーの具体的な内容について検討することになっています。
いの健センターとしても、実行委員会を全面的に支え、セミナー成功の中軸として奮闘することが求められています。
そこで、次回の幹事会は強行日程ですが、前段に「セミナー実行委員会」を開催して話し合い、その結果を受けていの健幹事会として具体化するために、連続して会議を開催することにしました。
いの健加盟団体は「セミナー実行委員会」から参加して下さい。よろしくお願いします。
なお、いの健未加盟の諸団体にも働きかけて、「セミナー実行委員会」に積極的に参加してもらえるよう進めたいと思いますので、特に県労連を中心としたご協力に期待します。

第2回「遺族の集い」を開催します。

いの健センターとしては昨年初めて「遺族の集い」を開催しましたが、ご遺族のみなさんからも「参加してよかった。新しいつながりが出来、支え合えるのが嬉しい」といった声が寄せられました。
今年も「第2回遺族の集い」を開催し、さらに交流と励まし合いを深めたいと考えています。
下記のように開催しますが、加盟団体からの参加希望があれば「いの健事務局」までご連絡下さい。

日 時:8月21日(土) 13時半~16時(予定)
会 場:仙台市戦災復興記念館4階第4会議室
参加費:500円(ケーキと飲み物代)

2010年5月14日 毎日新聞 「クローズアップ2010」の記事はこちらから PDF版(281KB)

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