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□ いの健ニュース


第33号(2010年10月31日発行) ※PDF版はこちら

第6回東北セミナー 東北各県から163名の参加!

10月16日(土)~17日(日)の2日間、「働くもののいのちと健康を守る第6回東北セミナー」が茂庭荘で開催されました。
開会挨拶をする大窪豊実行委員長今年は第1回の山形から始まって、ちょうど1巡最後のセミナーでしたが、東北各県から163名(青森7名、岩手23名、山形11名、秋田5名、福島5名、宮城106名、組織外の講師・助言者6名)の参加で、その責任を果たすことができました。
実行委員長の大窪先生(宮城民医連会長)は現在の厳しい情勢に触れながら「今日本国民は新しい国の形、社会のあり方を模索している状態です。派遣切りなどで解雇された人々を支援する取り組みが多くの団体・個人の協力で進み、失業者や未組織労働者自身が労働組合に参加して闘い始めています。
私たちの戦線は確実に拡大しようとしています。~こういうときだからこそ、恒常的な運動の拠点として各県センターを結成し、労働組合運動や市民の運動の中に働く人々のいのちと健康を守る運動を位置づけることを強く呼びかけます」と、主催者挨拶を行いました。
全国センターの福地保馬理事長と全労連東北ブロック議長の鈴木露路いわて労連議長から連帯のご挨拶をいただきました。
記念講演をする佐々木昭三氏記念講演は全国センター理事、労働総研常任理事、東京社医研理事の佐々木昭三氏から「心と体の健康を守るための働くルールの実現をめざして」と題してお話ししていただきました。
講演の中では「人類は長年の闘いを通して、8時間を働き、8時間は睡眠を取り、8時間は家族や自分のために使うことが健康に生きるためのルールとして確立してきました。
~しかし、そのような国際的にも確立されたルール(ILO条約)を最も批准していない国、それが日本なのです。
~職場と地域で、すべての働く人々が健康で人間らしく生き働くためには、①働きやすい職場づくりをめざして、職場の労働安全衛生を確立すること、②安全・安心と心身の健康が守られる働くルールの法的基準の確立、③心身の健康障害につながるあらゆる過重労働の制限と規制、④件区で人間らしく働ける労働環境と人間関係の確立、⑤健康で人間らしく働ける社会的ルールの確立、⑥それらを実現するための共同と拠点としての地方センターの結成が不可欠です。」と述べながら、いのちと健康を阻害している社会的・政治的矛盾に真正面から立ち向かうこと、そのために労働組合運動はもっと労働安全衛生活動を重視する必要があることを強調しました。
最後に、働くもののいのちと健康を守る全国センターの掲げている制度要求に触れながら、「その原点は長時間過密労働を根絶すること」として、「第1に、1日8時間・週40時間労働の実現、時間外労働の規制、時間外労働の割増賃金の引き上げ、ILO条約の批准と国内法の整備、連続休息最低11時間の確保、年次有給休暇最低20日と連続取得の保障、労働時間の短縮と労働要員の確保、変形労働時間・フレックスタイム制の規制。
第2に、不払い残業根絶法の制定。第3に、不払い労働の合法化の阻止。第4に、深夜・夜勤交代労働の規制が必要であること」を話し、もう一つの基本は「すべての労働者、すべての事業所に労働安全衛生体制と健康診断・保健予防体制の拡充」を徹底することの重要性を話されました。

140人以上の参加者でびっしり埋まった開会集会

1日目の後半と2日目には講座・分科会が開催されました。
「労働環境と労働安全衛生活動について」学んだ第1分科会(講座)は、全国センターの福地理事長が講師を務め23名が参加、第2分科会「労働実態と労働災害、公務災害認定闘争の重要性」(助言者、杉山茂雅弁護士)には15名、第3分科会「メンタル不全を生まない職場作りと復帰支援活動の重要性」(助言者、佐々木昭三氏)には40名、第4分科会「パワハラ・セクハラ問題にどう対応するか」(助言者、佐藤由紀子弁護士)に26名、第5分科会「働く女性の労働実態と健康問題」(助言者、宮城厚生協会職場復帰支援室の鈴木悦子氏)に10名、初めて設定した第6分科会「自営業者、農民、女性の健康問題」(助言者、埼玉センター副理事長の小滝勝弥氏)に14人、第7分科会「アスベスト問題の現在と今後の課題」(助言者、アスベスト対策センターの金田基氏、鈴木一利氏、仙台錦町診療所長の広瀬俊雄氏)には18名と、分科会にも合計で146名が参加し学び合いました。1日目夜の夕食交流会には宿泊の84名を含めて92名の大交流会になりましたが、診察の関係で日中参加できなかった今田隆一医師から東北の民医連を代表しての歓迎の挨拶がありました。また副実行委員長の鈴木新宮城県労連議長の挨拶や、宮商連会長の伊藤貞夫さんの乾杯の後、和やかな交流会が行われました。

第1分科会の様子第2分科会の様子

第3分科会の様子第4分科会の様子

第5分科会の様子第6分科会の様子

第7分科会の様子

宮城からの106名の内訳は、民医連の40名を筆頭に、宮城一般18名、宮教組13名の他、医労連、高教組、ソニー労組仙台支部、仙台銀行労組、全気象東北地本、郵産労仙台支部、宮商連、宮城建交労、宮城県労連、宮城いの健センター、労働相談センター、遺族の会(仮称)、弁護士や個人参加の方々でした。
閉会集会では実行委員会事務局長の富樫昌良さん(宮城いの健センター事務局長)から、次回の開催県について「順番からすれば山形と言うことになるが、一回り目の反省を活かし、開催県任せにならないように、開催県にだけ大きな負担をかけないように、各県民医連・各県労連・いの健センターが加わって今後の開催のあり方について検討することになりました。検討会が終わった後改めて来年度の開催県を確認し、セミナーの継続発展に結びつけることで確認されている」ことが報告されました。

閉会挨拶をする事務局次長の芳賀さん


宮城未組織センター第33回総会について

10月22日(金)に宮城未組織センターの第33回総会が開催され、いの健センターからは富樫事務局長が参加しました。
加盟17団体(オブ加盟含む)から25名ほどが参加し、未組織労働者の組織化のための運動課題と方針が検討されました。冒頭、記念講演として水谷英夫弁護士が「請負労働者問題」について話し、「非正規労働者の増加について自己責任論があるが、それは全くの間違いで、基本的な原因は日経連(当時)の“新時代の日本的経営”がめざした雇用の流動化と労働分野における規制緩和にある」ことを指摘しました。
八島事務局長の報告提案に対し、いの健センターの富樫事務局長は未組織センターの財政支援(相談員配置を目的に、年間48万円の補助を受けています)に対する感謝の意を表明するとともに、「労働相談者の多くがパワハラ・いじめなど職場の人間関係に悩んでいる。過労死・過労自死を生まない職場を作るためにも、県労連をはじめとする各労働組合がパワハラ問題や心の病気問題への対策をもっと重視すべきではないか」と問題提起の発言を行いました。

当面の活動日程( 予定)
○ 全国センター理事会 11月10日(水)
○ いの健宮城県センター幹事会 11月中旬(近日中に案内発送予定)
○ 全国センター総会 12月3日(金) 代議員1名
○ 2011宮城春闘討論集会「いの健分科会」 12月4日(土)~5日(日)
○ 赤坂事案高裁判決 12月8日(水)13時15分※傍聴要請

学習/政策制度要求解説連載( 第5 回)
「第5、労災などの認定基準の改善」

現行認定基準については、この基準を超える判断が、行政裁判で確定し、また労働保険審査会でも裁決されています。
政府は少なくとも行政裁判で確定し認定基準を超えるものは、速やかに改訂し救済を前進させるべきです。また、行政手続法では「審査基準は具体的、公開」と明記しているにもかかわらず、果たされていません。
私たちは全国の声を集約して現行の労災・職業病の認定基準について、今後さらに綿密な改定要求を提出する予定ですが、当面する課題について次のように要求いたします。

1、脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について

脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準を夜勤労働など業務の過重性に着目した認定基準とするなど、早急に改善してください。

2、精神障害判断指針について

平成21年4月6日付けで「心理的負荷評価表」の見直しなどの一部改正が実施されました。しかしながら、現行判断指針には多くの問題が残されたままです。私たち全国センターは平成18年11月に提出した「精神障害判断指針の抜本改正要求」にもとづき改善することを要求してきましたが、当面以下の項目の実現を要請します。
①心理的負荷評価表の「心理的負荷の強度」の項目を増加させること。
②慢性ストレス、長時間労働に関する評価基準を設けること。
③過重な急性労働ストレスが複数存在する場合、実態に沿い総合的に評価を行うこと。
④精神障害発症後の過重労働による増悪・自殺を認めること。
⑤「平均的な心理的負荷の強度」にかたよった判断指針の運用を改めること。
⑥PTSDに関する改訂基準を明確にすること。

3、腰痛の認定基準の改定について

腰痛の認定基準については、扱う重量物による基準(20キロ以上)ではなく、作業姿勢や作業時間などを重視し保母や運転手など労働者の労働実態に見合ったものにすることなど、私たち全国センターが平成15年6月27日に提出した「腰痛認定基準の抜本改正要求」にもとづき改正すること。

4、頸肩腕障害について

頸肩腕障害については、「被災者が発症しやすい業務に従事していたこと」「その業務が被災者にとって、一定の過重性があること」「他に確たる原因がないこと」など、全国センターが提出した平成15年6月27日付「頸肩腕障害認定基準の抜本改正要求」にそい、頸肩腕障害など上肢障害認定基準を改めること。

5、アスベストの労災など認定基準について

認定基準を改善し、すべての被災者を救済することを求めます。
①中皮腫に関しては、厳格な病理組織診断を要求せず、画像診断、胸水細胞診による診断も認めること。
②肺がんに関しては、暴露歴が一定期間以上あれば、原則認定すること。
③石綿肺についても、アスベスト暴露歴(一定以上)が認められた間質性肺炎を積極的に労災認定すること。「日本産業衛生学会」や「日本呼吸器学会」など関連する学会に間質性肺炎とアスベスト粉じん暴露に関する調査・研究を依頼し検討を行うこと。
④指定5疾病以外の疾病についても労災補償の対象とすることを検討すること。
⑤迅速な労災請求を行うにあたって、正確な確定診断ができるよう医療機関の体制を充実すること。
⑥時効・申請期間の周知をはかるとともに弾力的な運用を行うこと。
⑦石綿関連疾病に係る労災保険の療養補償、休業補償、葬祭料の時効(現行2年)の見直しを行うこと。特別遺族給付金の支給決定を受けた者には、労災保険法の療養・休業補償、葬祭料の時効は適用しないこと。
⑧職歴調査が進むよう措置を講じること。

6、その他職業病の認定基準の改定について

内視鏡消毒作業従事者のグルタルアルデヒド障害などの救済、化学物質による疾患や化学物質過敏症、VDT障害、職業がん、じん肺、振動障害の認定基準などについて、被災者救済の立場から認定基準とその運用を改めること。

7、その他の公務災害に関する要求

給食調理労働者の「手指障害(指曲がり症)」、保育労働者・介護労働者の「頸肩腕障害・腰痛症」、清掃労働者の「腰痛症」等を職業病として認め、「施行規則」の別表を第1の「公務に起因することの明らかな疾病」とすること。
(全国センター理事保坂忠史)

 

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