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□ いの健ニュース


第31号(2010年8月23日発行) ※PDF版はこちら

第6回東北セミナーの要項決まる!

「働くもののいのちと健康を守る第6回東北セミナーin仙台」の概要が決まりました。
詳細は案内チラシができましたので、それをご参照下さい。
主な内容について紹介します。日程、会場、参加費等は以下の通りです。

日時:10月16日(土)13:00開会~17日(日)12:00閉会
会場:仙台市太白区「茂庭荘」( 東北自動車道仙台南ICからすぐ)
参加費・宿泊費
■ 宿泊者(参加費込み) 13,000円
■ 日帰り・参加費(2日間) 3,000円
    〃   (1日目のみ) 2,000円
    〃   (2日目のみ) 1,000円
■ 日帰りで交流会参加  +6,000円

記念講演や各分科会も非常に充実した内容で、参加者の期待に十分応えられるものと思います。

記念講演13:30~15:30

「心と体の健康を守るための働くルールの実現を求めて」
講師佐々木昭三氏(全国センター理事、労働総研常任理事、東京社医研理事)

分科会16日/15:45~17:30 17日/9:00~11:30
①職場における労働安全衛生活動について(基礎講座/全国センター理事長・福地保馬氏)
②過労死・過労自死の労災・公務災害認定闘争の意義(宮城・杉山茂雅弁護士)
③メンタル不全を生まない職場作りと復帰支援活動(記念講演講師・佐々木昭三氏)
④パワハラ・セクハラ問題にどう対応するか(宮城・佐藤由紀子弁護士)
⑤働く女性の労働実態と健康問題(講師要請中)
⑥自営業者、農業従事者、地域の人々の健康問題(埼玉センター副理事長・小滝勝弥氏)
⑦アスベスト問題の現在と今後の課題(宮城・広瀬俊雄医師、金田基氏、鈴木一利氏)

夕食大交流18:30~20:30

誰でも自由に参加できます。加盟団体だけではなく、多くの働く方々が参加し、学び合い、交流し合うことができれば、それがいのちと健康を守る大きな力になるだろうと思います。心から期待しています。

第2回「過労死・過労自死遺族の集い」開催

8月21日(土)にいの健センター主催の「第2回過労死・過労自死遺族の集い」を開催しました。
集いには2人の遺児を含め16人のご遺族と弁護士3名、医師3名、いの健センター関係6名、マスコミ関係者1名の計29名が参加しました。

はじめに被災者への黙祷を捧げた後、真壁会長が主催者挨拶、富樫事務局長が経過報告と資料集の説明を行いました。挨拶する真壁会長
ご遺族のみなさんからは口々にもっとも身近な人を亡くした悔しさと怒りが語られました。

赤坂さんからは「やっと再審査請求までがんばって労災を認めてもらったのに、損害賠償請求訴訟をしたら仙台地裁が認定の事実を踏みにじり、原告敗訴の不当判決を下しました。
怒りでいっぱいですが、高裁では必ず勝ちます。みなさんも絶対にあきらめず、お互いに支え合ってがんばりましょうね」と、若いご遺族への励ましも込めて話されました。

高野さんからは「正直言って自死ということへの後ろめたさもあった。
途中で苦しくなりやめようかと考えたこともありましたが、認定によって後ろめたさも払拭できました。
家庭の生活は一変しましたが、闘って良かったと思っています。まじめに働いている人たちがいのちを奪われないように、社会の問題として考えてほしいと思います」と訴えました。

石森さんからは「息子は会社に殺されたのです。資料にも紹介されているような“異常な働かせ方”がまかり通っていること自体が異常なんです。
労災は認定されましたが、息子は帰ってきません。会社からは一片の謝罪もありません。
損害賠償を求めて闘うことにし、7月に訴状を提出しました。」との報告がなされました。

早坂さんからは「会社からはあること無いこと誹謗中傷を受け、幼い子どもたちまで傷つきました。
申請書類さえなかなかもらえませんでしたし、労基署ではトラック運転手なんか申請しても無理ですよというような冷たい言われ方もしました。
初めは1人で申請しましたが認められず、いの健センターや弁護士の先生方のおかげで審査官段階での認定を得ることができました。
でも、会社からは今もって謝罪の言葉もありません」と、声を震わせての発言がありました。

斎藤さんは「会社は結局何の協力もしてくれませんでした。さまざまな資料を集めるのも、仕事の実態をつかむのも家族ががんばるしかありませんでした。
全国家族の会に相談し、いの健センターの存在を知り、錦町診療所を含めていろいろお世話になりましたが、今でも自分を責めてしまいます。私も会社からは何の挨拶もありません」と、労災認定の取り組みの辛さが語られました。
小さな子もパパのことを思い出しながら

鈴木さんは「最初いの健センターに相談したものの、夫を助けることのできなかった自分を責めて申請を断念したこともありました。
でもがんばって働いていた夫の無念を思うとこのまま終わってはダメだと思い直し、錦町診療所やいの健センターの力を借りて時効ぎりぎりのところで申請しました。
労働時間だけでは難しかったかもしれませんが、職場のみなさんの協力で仕事の質や上司のパワハラも明らかになり、総合的な判断で認定されました」と報告されました。

大泉さんは「この7月にやっと公務災害認定を求める申請をしましたが、ここまでものすごく時間がかかってしまいました。
上司は箝口令を敷き、職場の同僚からも協力を得られず、途方に暮れた時期もあります。でも、労働組合やいの健センターの助言を得て少しずつ資料も集めてきました。
どんなに辛くても、惨めな亡くなり方をした夫の無念を晴らしたいと思います。
子どもたちに、あなたたちのパパはがんばってがんばってがんばって働いていた素敵なパパなんだよと言えるよう、がんばりたいと思います」と決意が述べられました。

山形から参加した太田さんは「夫がそんなに思い詰めているとは、そんなに苦しんでいるとは知りませんでした。
それが一番悔しいのです。民営化の後、仕事も大変だったようですが、上司のパワハラも相当にひどいものだったようです。
労働組合や組合の顧問弁護士とも相談しています。
明後日労災申請をする予定ですが、とにかく死ななければならなかった真実を知りたいのです」と話されました。

岩手の及川さんは「息子は宮城県の職場に採用され、3年目に自死したのです。しかし、ものすごく閉鎖的な職場で仕事の様子も全く不明、会社も頭から責任を否定しています。
しかし、突然遺体になって帰ってきたのです。親のショックは言葉で言えるものではありませんでした。
今にして思えば、息子がSOSを出している時に助けられなかったことが悔やまれてなりません。
会社からは1ヶ月半もたって初めて自宅に説明に来ましたが“ここの職場は精神疾患が多いから”とさらっと言われてしまいました。宮城県労連に相談すると言ったらちょっとだけ会社の態度が変わりましたが、それだけのことでした。
今は、みなさんの力を借りて息子の亡くなった原因をはっきりさせたいと心に決めています」との話されました。

同じ岩手の千葉さんは「息子は宮城県の職場でこの4月からやっと正規職員になれたと張り切っていました。
しかし、6月に突然死したのです。労基署に行ったら同僚の証言がなければダメだと言われました。
友達とのメールにはさまざまなことが残っています。無料法律相談に行き、訴訟することにして取り組んでいます。
息子の死を曖昧にしたくないし、がんばって働いているみなさんのためにも職場の改善につながるようがんばっていきたいと思っています」というお話がありました。

続いて弁護士や医師のみなさんからの発言もありましたが、その中で横田弁護士は「多くの方が相談にも来れない現実があることをもっと重視したい」と発言がありました。

杉山弁護士は「自死の場合は偏見との闘いでもある。認定闘争は新しい被災者を出さないための闘いでもあることを考えよう」と訴え、庄司弁護士からは「長時間労働は緩慢な殺人だ。死んでからではなく、休職段階で労災認定を求める闘いを」と提案もなされました。次々怒りの発言をするご遺族のみなさん

東医師は「精神疾患が多いのは、プログラマー、教員、公務員、介護職、派遣労働者だ。なぜなのか考えてみてほしい。
そして、最近は症状の重症化と若い人の罹患が多いのが気になっている」と、笠原医師は「自殺予備軍は膨大な数だ。先進国では日本の自殺率が最も高い。
労働行政は欧米より遙かに遅れているし、昔から精神主義の国だから、心の病気を偏見で見たり、個人の弱さにしてしまっている」と、専門医ならではの発言がありました。

広瀬医師からは「遺族は辛いのに、支援団体は“がんばれ”と言うし、弁護士は“なかなか難しいな”と言う。
これでは遺族はたまらない。
遺族は苦しんでいるのだから弱音を吐く場が必要だ。
それが“遺族の集い”だし『遺族の会』を作る意義だと思う」と、遺族に寄り添った運動のあり方や、今後の遺族同士の関わり合いについて発言がありました。

早坂さんや斎藤さんからは「過労死や過労自死を出したらその企業名を公表するように運動してほしい。そうでないと労災が認定されても会社は痛くもかゆくもないし、何にも改善しようともしないのは許せない」という訴えもありました。

最後にいの健センター相談員の桑山さんと県労連の八島さんから「私たちも一緒に闘います」との激励の発言があり、予定よりも30分も延びて16時半に終了しました。
ちょうど3時間の集いでしたが、改めてその深刻な実態と闘うことの意義を確認し合うことのできた集いになったと思います。
最後になりましたが、金田さんと中山さんの名司会に感謝して報告とします。(富樫記)

学習/政策制度要求解説連載( 第3 回)
「第3 労災・公務災害などの療養補償( 保障)とリハビリについて」

「働くもののいのちと健康を守る政策・制度要求」の解説の3回目は、「第3 労災・公務災害などの療養補償(保障)とリハビリについて」です。原文は、全国センターのホームページを見て下さい。

1946年11月3日に公布された日本国憲法は、第25条(国民の生存権、国の生存権保障義務)、第27条(労働の権利・義務、労働条件の基準、児童酷使の禁止)を規定し、それを労働の現場で具現化するものとして、翌47年4月7日に労働基準法、労働者災害補償保険法が同時に公布されました。事業者の災害補償責任を労働基準法で定め、それを担保するものとして労災保険法が作られたのです。
労災保険法第1条(目的)には、必要な保険給付を行うだけでなく、“社会復帰の促進”や“労働者の安全及び衛生の確保等を図り”と明記されています。労災や公務災害に認定されることは、単に失われた損害の補填だけではなく、社会復帰や再発防止に向けた労働環境の改善も目的に含まれているのです。
労災の療養は、単に病気の治療だけでなく、社会(職場)復帰に向けての体制づくりや施設の拡充も大切です。障害が残ったとしても働き続けられる職場の確保や安全衛生の向上も重要ですが、これは労災被災者だけに言えるのではなく、労災には該当しなくても病気や障害を抱えることになった方々や基礎疾病や障害を抱えた労働者にも言えることです。誰もが働き続けられる職場を目指していきましょう。

社会復帰するまで必要な療養を確保させよう
労災・公務災害被災者の療養補償について

労災の場合、治療が必要でも「症状が固定した」として“治癒”として排除され、健康保険に肩代わりされています。被災労働者が安心して療養し社会復帰できるまで、必要な医療を保障すべきです。頸肩腕障害や石綿関連疾患などの場合、適切な診断・治療ができる医療機関が限られています。アスベスト肺がんの場合、石綿ばく露作業者でも発症の原因を喫煙で片付けられている被災者が多くいます。結果として労災で補償すべき医療費が健保に肩代わりさせられているのです。国が責任を持って労災医療機関を拡充すべきですし、限られている専門医療機関に受診しているのに、距離制限で通院費などを認めない運用を改めるべきです。
また、労災・公務災害請求中も安心して療養できるよう制度を整えることも求めていきます。

リハビリの保障と社会復帰の体制作りを
療養者のリハビリテーション補償、予防給付について

脳疾患後遺症などでのリハビリでは、一般には急性期を過ぎ慢性期に移行したとして180日で病院でのリハビリは打ち切られ介護保険での在宅リハビリ療養になります。労災の場合は、慢性期に移行しても病院でのリハビリが継続できる建前ですが、労災での診療報酬が介護保険より低いため医療機関から断られリハビリが受けられません。労災の診療報酬は社会保険の20%増しですが介護保険より低いままです。介護保険導入時に必要な見直しが行われなかったためですが、厚生労働省はそれを放置しています。社会復帰のためにもリハビリ治療を保障させなければなりません。
じん肺、振動障害、精神障害などの社会復帰訓練施設、設備の拡充、復職支援制度の拡充など、本格的な社会復帰対策が求められています。また、新型インフルエンザが話題となりましたが、じん肺患者のインフルエンザ予防ワクチンなどの予防給付も制度化すべきです。

すべての人が働き続けられる職場を目指して
病気や障害を持ちながら働く人の療養保障と職場復帰促進を

労災には該当しなくても、夜勤や過重労働で病気や障害を抱える人も少なくありません。病気を理由にした解雇を制限するため、病気休暇制度を制度化することが必要です。
また、職場復帰においては障害者職業センターなどが行っている事業場外資源の復帰支援プログラムをさらに増やすことも求めていきます。増加の一途をたどっているメンタルヘルス不全に助言・相談対応ができる体制を整えることも急務です。
休業中の所得保障を拡充し職場復帰訓練、段階的就労が円滑に行えるよう健康保険法など関連法規の見直しが求められます。企業に対して、少なくとも障害者法定雇用率を守るよう指導させるとともに、病気や障害を持ちながら働く人が働き続けられる職場作りが大切です。
公務員に関しても、療養補償(保障)や職場復帰の支援が切実に求められています。
(全国センター理事廣田政司)

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