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□ いの健ニュース


第29号(2010年6月10日発行) ※PDF版はこちら

自治体職員の突然死、公務災害認定なる!

T市総務部交通防災課消防防災係の主事であった被災者Hさん(当時29歳)の公務災害が、6月2日付で認定されました。

遺族(妻)によると、Hさんは02年から2年間国土交通省地方整備局に出向し、慣れない職場で月平均60時間近い時間外勤務と精神的ストレスを抱えながら激務に従事しました。

04年にT市役所に帰任後は総務部防災課に配属されましたが、地域防災計画の見直し(防災マニュアル作成)、地域防災リーダー育成講座の計画・運営・進行・まとめ・資料作成や防災訓練・消防団訓練の担当業務を担いました。

一人で職務をこなさなければならなかったため、給与明細上だけでも月平均55時間前後の時間外勤務(実際には帰宅後も仕事をせざるを得なかった)を余儀なくされた上、クセのある上司との人間関係に苦しめられ、04年7月頃から「神経衰弱症」に陥りました。

04年12月の市議会に向けて防災マニュアルの完成を求められていたにも関わらず、直前には婦人防火クラブの一泊旅行への引率や県庁出張もあり、心身の疲労は限界に達していたものと思われます。

被災前日の12月6日には、極度の疲労状態にあったにも関わらず防災マニュアルへの防災関係各機関からの意見をまとめ、8日の議会に成案として提出するために体調不良を押して出勤しています。

そして帰宅後は顔色も悪く、「疲れた、疲れた」を連発し、翌早朝に突然苦しそうないびきをかいたかと思うとそのまま息を引き取りました。

遺族は「労働の質と責任の度合いの大きさに加え、記録上の時間外労働だけではなく、防災という特殊な任務上24時間常に緊張状態を保たざるを得なかったことなど、特に精神的疲労の継続・蓄積が急性心臓死を招いた」ことを主張し、公務災害の認定を求めたものです。

基金支部の認定通知書によると、「医学的知見」として
(1)基金本部が委嘱する専門医の意見は「~上司との人間関係において、うつ病に近いものを発症したとするのが相当」としていること。

(2)~心室細動を起こしていることは分かるが~、基金本部が委嘱した精神科医が精神疾患について公務との因果関係を認められているのであれば、強度の精神的ストレスを受けた場合に心臓死が増えるということは統計的にも証明されていることであり、今回の発症機序としては精神的負荷を受けて心室細動を起こし、死亡したとするのが相当であろう。
としています。

また、「本件災害に係る公務過重性の検討」の項では
「~週休日はおおむね確保されている。平日もおおむね20時頃までには退勤していることから、公務による過重負荷のため十分な休息が取れなかった状況であったとは認められず、時間外勤務からも~通常の日常の職務に比較して特に過重な職務に従事していたとは認められない。 しかしながら、(課長との人間関係や一人で仕事を抱え込んでいる状態)から、職場においてもサポートが十分行われていたとは認めがたい。」「以上のことから、上記(通常の日常の職務)にあるような精神的緊張を伴う職務従事状況であったと推測される。したがって、時間外勤務等のみでは過重な職務とは認められないものの、精神的負荷を加えて総合的に評価すると、過重な職務であったと認められる。~本件事案は~被災職員と職種、職、職務経験及び年齢等が同程度の職員にとっても、特に過重な精神的負荷であると認められる」とと記され、『結論』として「以上のとおり、本件急性心臓死と公務との間に相当因果関係が認められることから、公務上の災害と認定する」となっています。

この事案で主として相談にのってきた錦町診療所の金田基さんは「奥さんが準備された詳細な資料がかなりの説得力を持ったことと併せて、同僚職員4名の「意見」で上司(課長)との関係での精神的負荷が斟酌されたことも大きいという印象を持ちました」と述べていますが、今後の公務災害認定闘争を進める上で貴重な教訓になる事案だったと思います。

亡くなった被災者に改めて哀悼の意を表するとともに、最後までがんばったご遺族に敬意を表したいと思います。

そして、公務・民間を問わず、働く人々のいのちがこれ以上奪われないように、安心して気持ちよく働くことのできる労働環境を作る運動を引き続き強めていきたいものです。

第6回東北セミナー「第1回実行委員会」が開催されました

実行委員長に民医連の大窪豊会長
副実行委員長に鈴木県労連議長と真壁いの健会長

6月10日(木)に県労連会議室において、標記の実行委員会が開催されました。今回は12団体から出席があり、いの健の富樫事務局長の提案に基づき論議し、下記のことを確認しました。

○ 第6回東北セミナーの日程、会場、経費の確認
  日 時  10月16日(土)13:30~17日(日)12:00
  会 場  仙台市太白区・茂庭荘
  参加費  宿泊費10,000円、参加費(資料代、会議室会場費、講師謝礼等込み)3,000円
        ※日帰り参加者の参加費は(1日目2,000円、2日目1,000円)。詳細は再検討。

○ 現地実行委員会の体制について
  実行委員長/大窪豊(民医連会長)
  副実行委員長/鈴木新(県労連議長)、真壁完一(いの健会長)
  事務局長/富樫昌良(いの健事務局長) 事務局次長/芳賀直(仙教組委員長)
  事務局団体/民医連、県労連、民医労、宮城一般、宮教組、福祉保育労
  実行委員/実行委員会加盟各団体から各1名

○ 第6回東北セミナーの基本的な内容
 ①日程について
  16日12~13時受付
    13:00~13:30 開会集会
    13:30~15:30 記念講演(講演90分、質疑・意見・感想30分)
    15:40~17:30 講座・分科会
    18:30~20:30 夕食交流会(挨拶/副実行委員長A)
  17日9:00~11:30 講座・分科会/活動報告や経験交流、課題の確認
    11:40~12:10 閉会集会
②講師・助言者について
  1)記念講演について(テーマ案)
   ・第1案/貧困・格差の拡大と働く人々の健康問題
   ・第2案/健康で働く環境づくりと闘いの展望
  2)講座・分科会(例) 5~6に絞る予定
   ⅰ)劣悪な労働環境と労働安全衛生活動について(基礎講座)
   ⅱ)労働実態と労働災害、公務災害認定闘争の重要性
   ⅲ)メンタル不全を生まない職場作りと復帰支援活動の重要性
   ⅳ)パワハラ・セクハラ問題にどう対応するか
   ⅴ)働く女性の労働実態と健康問題
   ⅵ)自営業者、農民、女性の健康問題
   ⅶ)アスベスト問題の現在と今後の課題
③参加目標について
 ●宮城県内/参加100名以上、宿泊50名以上(各団体の参加者の半数)を目指す
   ・民医連20 ・民医労10 ・医労連10 ・全医労5 ・宮教組15(仙教組・支援団体含む)
   ・高教組5 ・私教連3 ・宮城一般10 ・自交総連3 ・建交労5 ・全気象3 ・郵産労2
   ・仙台銀行労組3 ・宮商連3 ・県労連事務局+地方労連5 ・いの健未加盟組織10
   ・いの健事務局、その他(遺族、相談者など)10 計120名を目指して取り組む
 ●県外からの参加期待数
   ・山形20 ・秋田15 ・青森10 ・岩手20 ・福島20 計85名
 ●これまでの参加者数

参加者数
山形
秋田
青森
岩手
福島
宮城
講師等
合計
2005/第1回山形
55
9
7
10
12
42
5
140
2006/第2回秋田
6
76
8
8
5
22
7
132
2007/第3回青森
4
6
41
7
7
18
7
90
2008/第4回岩手
2
5
6
40
3
17
7
80
2009/第5回福島
8
5
3
8
97
25
7
153
2010/第6回宮城                

○ 第2回実行委員会は7月20日(火)18時15分~19時30分、県労連会議室です。
  ※実行委員会終了後、いの健幹事会(第2回)を開催します(1時間弱)。
   いの健加盟団体は、実行委員会から参加下さるようよろしくお願いします。

学習/政策制度要求解説連載(第1回)

第12回総会で提案された働くもののいのちと健康を守る政策・制度要求は、基本的な要求として、前文でディーセントワークの実現、労働行政の改善などをあげています。
要求は「第1 長時間・過密労働を是正し、過労死を根絶」「第2 労働安全衛生」、「第3 労災・公災被災者などの療養補償とリハビリについて」、「第4 労働災害、公務災害の労災補償制度」、「第5 労災などの認定基準」「第6 アスベスト対策」の6つです。
政策制度要求の全文は全国センターのホームページで見て下さい。解説を今号から6回にわたって連載します。(全国センターニュースより転載)

「第1 長時間・過密労働を是正し、過労死を根絶すること」

働くものが安全と健康を確保して、いのちと健康を守り、健康で人間らしき生き働くことができる「働くルールの大原則」は1日8時間の労働時間制の確立と心身の健康障害の要因となる過重労働をなくすことです。そのため「働くもののいのちと健康を守るための政策・制度要求」の第1に「長時間・過密労働を是正し、過労死を根絶すること」を掲げました。

1日8時間労働時間制の確立を
最初に、「1日8時間・週40時間制をただちに実現する」ことをあげています。それは過労死や心身の健康障害の要因に長時間・過密労働による過重労働があり、第一にこれをなくすことが必要だからです。
8時間労働制は、「8時間働き、8時間眠り、8時間は自分と家族の人間らしい生活のために」という20世紀の国際的な労働時間基準であるILO1号条約として世界では確立している内容です。日本でこの8時間労働時間制の確立が長時間な過重労働をなくす大原則です。
8時間労働制の確立のためには、ILO1号条約の批准と国内労働法制の拡充が必要です。8時間を超える労働は「特別の例外的な」こととして、上限時間規制(EUでは1日2時間、年間120時間など)と割り増し率アップ(国際的には残業割増率50%、休日100%)が1号条約批准国では国内法で定められています。
日本では、改定労働基準法で1日8時間が後方に押しやられ、週40時間が基準となり、上限規制がなく、割り増し率も60年以上も前の25%(4月から60時間以上は50%)のままであり、これの抜本改正(時間外労働の上限規制と割り増し率アップ)が必要です。そのために、ILO1号条約の批准と割増し率の向上を掲げています。
時間外労働規制は、現在「大臣告示」に示されている月45時間、年間360時間を法的規制にすることを求めており、これは日本での8時間労働制に向けての第一歩です。厚生労働省の「過重労働による健康障害防止」でも「月時間外が45時間を超えると心身の障害につながり」残業は45時間以内としています。

勤務間隔、有給休暇、変形・変則労働
勤務と勤務の間隔を連続する休息時間として最低11時間確保するとしています。これはILOの夜業条約・勧告をふまえてEU労働時間指令と同じく国際労働基準となっている内容で民主党の政策にもなっています。これは心身の健康を守るために7時間単位の睡眠と食事・入浴などの最低の日常生活をするための基準です。
年次有給休暇は最低20日(ILO条約3労働週)として、一定日数の連続取得(ILOは2週)と有休の完全な取得保障と企業への義務づけを求めています。また、そのために必要な要員・人員の確保の必要性と労働行政指導を求めています。
また、睡眠、食事、生活に障害をもたらす変形労働制の導入には、公益上必要な場合のみとして、週所定労働時間40時間の範囲で1日所定1時間の延長を限度とすることで変形労働制の規制を求めています。それに、同じ問題があるフレックスタイム制や裁量労働制の導入には労働者の要求によるものとして、所定労働時間の上限を1日10時間、4週160時間で法定化することを掲げています。

不払い残業根絶、不払い残業「合法化」は導入しない
違法で長時間労働の温床となっている不払い残業を根絶するために「サービス残業根絶法」を制定して、その内容は悪質な企業名の公表やペナルティとして不払い残業代の倍加支払い、それに、「名ばかり管理職」の不払い残業をなくし、中間管理職や裁量労働制の労働者の労働時間管理を明確にすることを求めています。
また、事業主の労働時間管理をなくし、違法な不払い残業労働を「合法化」する「ホワイトカラーエグゼンプション」制は、財界が名称を変えて導入をねらっているので絶対導入させないことを求めています。

深夜労働、夜勤労働、夜勤交代制の規制を
人間の生体リズム(昼間働き、夜眠る)に逆行し、心身の健康障害となる有害業務・過重労働である夜勤・深夜労働をきびしく規制し、行政指導を強めることを強調しています。多くの過労死事案でも夜勤交代の長時間労働が要因であることが示されています。そのため深夜労働を含む交代制勤務は社会的な必要なものに限り、労働基準監督署の許可制とすること。また、公益上、生産技術上夜勤労働がやむを得ない場合は、労働者の健康と生活を保護するために、労働時間や休憩・休息時間、仮眠時間、休日・休暇、交代制シフトなどを労働者の要求とILOやEUの国際夜勤労働基準をふまえて法制度上規定することを求めています。そこにはかつて労基法にあった女性、年少者の夜勤労働の原則禁止も含みます。

労働行政の充実と違反事業所への罰則強化
労働基準法・労働安全衛生法の労働者保護行政の徹底と違反事業所への罰則強化、労働行政指導強化をはかるために労働基準監督行政の充実を求めています。そのため労働基準監督署の統廃合をやめさせ、労働基準監督官などの職員の増員で労働監督行政を求めています。

(全国センター理事佐々木昭三)

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