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□ いの健ニュース


第20号(2009年7月31日発行) ※PDF版はこちら

今度は赤坂事案  労働審査会が逆転裁決!

 7月29日(水)付で労働保険審査会から、赤坂貴志さんの自死事案について「仙台労働基準監督署長が平成20年1月11日付で請求人に対してした労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)による遺族補償給付金及び葬祭料を支給しない旨の処分は、これを取り消す」という逆転裁決が下されました。

「裁決書」ご覧いただけます (653KB)

 これで赤坂貴志さんの自死は業務による労働災害として、正式に認定されることになります。
 6月23日(火)の、元小学校教員の高野啓さんの公務災害認定に続く逆転勝利で、現在労災認定を求めて闘っている遺族のみなさんを大いに励ますものです。

  赤坂貴志さんは2000(平成12)年7月より羽田タートル東北本部営業所から佐川急便東北支社に派遣され、宅配荷物等の仕分け作業に従事していましたが、5年半に及ぶ常夜勤労働の中でうつ病を発症し、2006(平成18)年3月27日に自ら命を絶ちました(29歳)。

 5年半に及ぶ常夜勤労働だけでも人間の生理に反するにもかかわらず、被災前1年間のタイムカードによって、殆ど毎月、100時間を超える長時間の残業をしていた事実が明らかになっていました。今年6月6日の「遺族の集い」で訴える赤坂優子さん
 しかも仕事事の内容は、クレジットカードやコンサートチケット、その他貴重品を扱う部署であり、相当の精神的負担があったと推測されます。
 家族の証言では、体調を崩しても休むことできないまま無理を続け、05年11月頃から抑うつ状態、06年2月頃からは中症度のうつ状態に陥っていたと思われます。
 母親の赤坂優子さんが06年12月15日に労災申請を行ったものの、08年1月、宮城労働基準監督署は過重労働の事実を認めながら、請求人側の医師意見書も無視し、「精神疾患を罹患していた確証はない」という理由のもとに労災を認めませんでした。
 08年2月26日に行った審査請求に対しても、労災保険審査官はまともな審査もしないまま、08年9月1日に「請求却下」という不当な裁定を下したものです。
 今回の裁決は、08年10月に労働保険審査会に対して行った再審査請求への決定ですが、弁護団(北見、杉山、崔、原田の4弁護士)の尽力とともに、“いの健センター”の存在と役割が改めて評価されるものと思います。

裁決要旨は以下の通りです。

1. (労基署の)専門部会は精神疾患を発病していたと確定することは困難としているが、平成18年2月頃の被災者の様子からは、「うつ病エピソード」(以下「本件疾病」という)を発病していたと見るのが相当であり、笠原医師も同意見であって、専門部会は「確定することは困難」即ち不明と見るのみで否定していないことからすると、当審査会としては本件疾病を発病し、平成18年3月27日に本件疾病に伴う異常心理の下で自殺により死亡したものと判断する。

2. 厚労省労働基準局長が策定した「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(平成21年4月6日一部改正)の考え方にもとづいて検討すると

ア 被災者は採用以来、午後7時~翌日午前4時を定時とする常夜勤勤務に就き、貴重品担当の仕分け作業に従事していた。
 恒常的に長時間の時間外労働があり、平成17年4月から平成18年2月までの期間に係る1ヶ月あたりの休日・時間外労働数は、98~139時間とされている。
イ この出来事は、心理的負荷評価表の具体的出来事のいずれにも該当しない(採用以来継続している出来事なので、「勤務・拘束時間が長時間化した」には該当しない)が、被災者は5年以上常夜勤勤務に継続して従事しており、しかもその間、1ケ月あたり100時間を超える時間外労働を常態としていたのだから、生理的に必要な最小限度の睡眠時間を確保することが困難な状態が長期間にわたり継続していたと見るのが相当である。
 したがって、被災者には、判断指針で総合評価を「強」とすることができるとされている「極度の長時間労働、例えば数週間にわたり生理的に必要な最小限度の睡眠時間を確保できないほどの長時間労働により、心身の極度の疲弊、消耗を来し、それ自体がうつ病等の発病原因となるおそれのあるもの」と考えられ、本件出来事による心理的負荷の総合評価は「強」であったと判断する。

3. 被災者の業務に関連する出来事の心理的負荷は、客観的に見て精神障害を発病させる危険のある強度のものであったと認められる一方、業務以外の出来事による心理的負荷及び被災者の個体側要因に特段考慮すべき事情は認められないことから、被災者は業務に関連する出来事が有力な原因となって本件疾病を発病したものと認められる。

4. したがって、監督署長が請求人に対してした遺族補償給付及び葬祭料を支給しない旨の処分は妥当ではなく、取り消されるべきものである。

  現在、仙台地裁において佐川急便と羽田タートルを被告とした損害賠償請求の訴訟を行い(08年4月24日)係争中ですが、今回の労働審査会の裁決は裁判闘争にも大きな影響を与えるものと思います。
 次回弁論は8月24日(月)11時から開催されますが、多くの傍聴参加によって、一気に勝利の流れを作り出したいものです。

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