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□ いの健ニュース


第18号(2009年6月26日発行) ※PDF版はこちら

”基金支部の公務外認定処分は失当”と逆転裁決!

故高野啓さんの過労自死で基金支部審査会


 6月23日(火)の段階で、宮教組石巻支部を中心に取り組んできた、元小学校教員の高野啓さんの公務災害が認定されることが決まりました。審査請求をした後の記者会見の様子
 高野啓さんは、2000年4月に転勤と同時に6年生の担任と研究主任等の公務分掌を担わされ、「大変だ、俺にはできない」と言いながら、連日深夜まで机に向かうようになり、肉体的・精神的に大きな負担を覚え、うつ病を罹患し、同年6月11日に38歳の若さで命を絶ったものです。

基金支部が不当裁決
 宮教組石巻支部を中心に『高野啓先生の公務災害認定を実現する会』支援団体を作り、03年10月14日に地方公務員災害補償基金宮城県支部に公務災害としての申請をしましたが、08年4月14日、4年半もかけたうえで不当な「公務外」裁定が出されました。
 公務外とした理由は「転勤は誰でもする。6年担任は誰でもする。研究主任も一定の年齢になれば誰でもする。だから過重ではない。精神疾患は公務とは無関係」という、極めて事務的で冷淡な内容に終始しています。
 遺族は08年6月10日に基金審査会に対し審査請求を出し、09年2月26日には弁護士や元同僚・関係教員による意見陳述を行いました。陳述では、教育現場の深刻な労働実態や転勤・6年担任・研究主任が重なったときの過重性を訴えると共に、基金支部の担当医も遺族側が申請した医師も、そろって公務起因性を認めているにもかかわらず、基金本部からの実態を無視した指示によって不当な判断がなされたことを厳しく指弾しました。

基金支部審査会の真っ当な判断
 今回の裁決(審査会の判断)で特徴的な点は、

1) 参考人として陳述した現場の教員の意見が重く受け止められたこと
2) 遺族が主張した自宅での持ち帰り仕事を「被災職員は6年生担任という業務多忙な学年を担当しており、勤務時間内に研究主任としての作業をこなす時間的余裕は全くない状況であった。~被災職員が残した多くの資料は自宅において作成されたものであり、研究主任として当該資料作成のために連日長時間の作業を行っていたものと推認することができる」と、全面的に認めた点も画期的なものである。
3) 遺族および基金支部が提出した医師の意見書は、どちらも公務過重性とそれによるうつ病発症を認めており、審査会はその点を重視したこと。
4) 審査会の判断は下記の通り(庄司捷彦弁護士要約)、極めて具体的・客観的だったこと。

1  「公務上の災害認定基準のあり方」(略)
2  「通常の日常職務に比較して特に困難な職務」だったと言える
(1) 総合学習の研究主任は「大規模プロジェクト」と評価して差し支えない。
(2) 初めての研究主任としての職務は、本人にとって「通常の職務に比較して特に困難な職務を命じられた」と評価できる。
3  「1ヶ月程度以上の、過重で長時間に及ぶ時間外勤務(週数十時間程度の連続)」だった
(1) 自宅で、連日仕事部屋に籠もっての仕事が続いていた。
(2) 6年の新学期が如何に多忙かについての各参考人の意見は信頼できる。ことに堀籠参考人の「自分も“総合的学習の時間”の研究主任とはなったが、学級担任は持たない軽減措置がとられていたので職務を全うできた」と語っている。各参考人の陳述から、本人は、研究主任としての業務は全て自宅で行っていたと推認される。原処分では「自宅での作業時間がすべて研究主任の作業に費やしたか判断できない」とするが、学校長は軽減措置をとらず、残業についても特別の指示をしていない。従って本人が自宅に仕事を持ち帰らざるを得ないのは当然である。自宅残業についての客観的資料が存しないのは学校長として部下職員の業務実態の把握方法を講じなかった結果に過ぎない。
(3) 各参考人の陳述によれば、6年担任をしながら研究主任の業務を勤務時間内に遂行することは不可能なことは明らかで、「自宅の仕事部屋にいた時間」はほぼ研究主任としての業務に従事していたと推認できる。それは、週あたり28時間となり20時間を超えることは明らかである。
4  「人事異動などによる急激かつ著しい職務内容の変化(精神的ストレスを発生させる諸事情)」があった
(1) 原処分はこの要件に該当しないとする理由を①から⑥として摘示している(省略)。
(2) 確かに①~⑥を分断して俎上に載せれば原処分のようにも言えるが、
◎ 有害事象は時として1+1を3にも4にもする。
◎ 6学年が他学年に比してその負荷が過重なのは明らかである。
◎ 提出された資料から、前年度の研究成果を示す資料は皆無で、本人が作成した資料からみて、校内研究の下地が出来ていたとは認められない。
◎ 「管内研修会」は僅か半日で、本人の業務遂行を軽減するものとは評価できない。
◎ 「通常ほとんどあり得ないとは言い切れない」との表現は「絶対にあり得ないとは言えないまでも通常はほとんどない」と理解するのが常識である。
(3) 総合すれば、上記「人事異動などによる急激かつ著しい職務内容の変化(精神的ストレスを発生させる諸事情)」があったと認める。
5  「個体的・生活的要因が自殺の主因でないこと」
本件において、個体的・生活的要因が主因となって自殺したものでないことは明らかである。
6  「強度の肉体的疲労、精神的ストレスなどの過重な負担に起因する精神的疾患の発症であると医学経験則に照らして明らかであること」
(1) 支部相談医の意見で、「発症は5月8日頃で、その原因は二つの業務分担による過度の精神的負荷があった」とされ、笠原医師の意見も同様である。
(2) 鑑定意見=医学的知見も、4月下旬からうつ状態が悪化してうつ病エピソードを発症し、5月8日頃には本件精神疾患を明らかに発症していたとする。
(3) 本人の状態は「強度の肉体的疲労、精神的ストレスなどの過重な負担に起因する精神的疾患の発症であると医学経験則に照らして明らかであること」を満たしている。尚、医学的知見にはその他の意見記載もあるが、その詳細が明らかでないので、上記判断を左右しない。
7  結論
以上から、本件は公務に起因した自殺と認めるべきであるから、処分庁が請求人に対して行った公務外認定処分は失当であって取り消されるべきである。

労災・公務災害認定を闘う遺族、支援団体からも喜びの声が続々!

6月6日「遺族の集い」-1 6月6日(土)に過労死・過労自死「遺族の集い」を開催した直後だっただけに、共に悩みや苦しみを語り合ったみなさん方からも心からの喜びの声が届いています。
 また、支援団体や全国組織などからもご遺族をねぎらい、勝利を喜ぶ声が届いていますので、以下に紹介します。

「すごく嬉しいです。自分のことのように嬉しいです。高野由美さんもどんなにほっとしていることでしょうね。でもご主人は帰ってこないんですよね。大友事案の時の博子の思いと、高野由美さんの思いとダブってきます。すぐ電話をしたいので高野さんの電話を教えて下さい」といただきましたので、きっと、いの一番に高野由美さんに「お疲れ様でした」と電話をかけられたと思います。 (大友博子さんのお母さん 小山公子さん)

  先日の集会は、お疲れさまでした。高野事案、良い結果で嬉しいです。でも、当然のことなんですよね。ご家族と支援者の方のがんばりがあったからだと思います。ほんとうに、良かったですね。まずは、私も労基署の結果を待ちたいと思います。(斉藤晴美)

 高野様のご遺族、関わった人々みんなのご苦労が報われ認められた事、嬉しく思います。本当におめでとうございます。結果はどうあれ、私達家族をを含め泣き寝入りせず訴える事が働く人々を取り巻く社会を働きやすく変えて行くのだろうと思います、家族を仕事に殺される事が無い世の中に、安心して「行ってらっしゃい、お帰りなさい」と言える世の中になって欲しいと思います。いの健センターの大切さも改めて実感致しました。高野由美様、おめでとうございます!(早坂百合江)

  まずはおめでとうです!故人は帰ってはきませんが、一つ一つの勝利の積み重ねが過労死・過労自6月6日「遺族の集い」-2 殺の無い社会の実現に向かわせるのだと確信します。遺族を支える教組・支援団体の力を実感させられます。広瀬所長にも伝えます。(錦町診療所、金田基)

 ご苦労様でした。そしておめでとうございます。裁決書を拝見させていただきましたが、大きな勝利ですね。ご家族の方も、お喜びのことと思います。(宮城県労連事務局長、鎌内秀穂)

  おめでとう。すごい成果です。ありがとう。(いのちと健康山梨県センター 保坂忠史)

  逆転勝利、おめでとうございます。まだ、ざっと目を通しただけですが、持ち帰り作業を認め、「正確な記録がないわけであるが」として、「週あたり28時間となり20時間を超えることは明らか」と判断させたことなど、貴重な前進を勝ちとったのではないでしょうか。じっくりと読み、今後の闘いに反映させたいと思います。裁決書の分析や声明とかできましたら、お送りください。勝利、共に喜びたいと思います。(全日本教職員組合 高橋信一)

  6月25日の朝日、毎日、読売の各紙に報道されましたし、26日には河北の朝刊にも載りました。6月27日は遺族の高野由美さんや庄司、杉山弁護士、宮教組石巻支部、いの健センターの方々が参加しての記者会見が予定されています。その後にもマスコミ各紙やしんぶん赤旗」が報道するとのことですので、注目願いたいと思います。

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