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働くもののいのちと健康をめぐる状況

2011年5月28日

1)はじめに

10年にわたる自公政権の悪政は、国民の貧困と格差を深刻なまでに拡大しました。その後の民主党政権もまた、国民の暮らし・平和・いのちと健康などには背を向けた悪政を進めています。労働者の平均給与が前年比で5.5%も減額した一方で、大企業の内部留保は11兆円も増え空前の「金余り」状態になっています。

非正規労働者の解雇・雇い止めはさらに増え、大学生・高校生の就職難は「超氷河期」と言われています。大企業による単価引き下げや円高を理由とした仕事減らしにより、中小商工業者の経営はいよいよ立ちゆかなくなっています。新米の産地価格の暴落で農家の暮らしや農村地域を崩壊寸前まで追い込んでいます。

生活保護受給世帯が190万を超え、子どもの貧困や高齢者の「孤独死」が問題になっています。高すぎる国保料を払えない世帯も急増、医師・看護師不足による医療の過疎化、保育所の待機児童や施設に入所できない要介護者の問題も深刻です。

それに加えての大震災と原発事故による地域や暮らしの崩壊が想像を絶する厳しさを生み出しています。被災者のいのちと健康、被災地域で奮闘する医療従事者や自治体職員・教職員のいのちと健康を守る活動が切実さを増しています。

2)人間らしい働き方の崩壊

1995年に発表された日経連「新時代の『日本的経営』」以後、年功序列型賃金体系に変わって、成果主義賃金体系に、そして「非正規労働者」の活用に大きく舵を切りました。1993年に16.4%だった非正規労働者は2008年には34.6%、実に3人に1人が非正規労働者になりました。

長時間労働や深夜労働などの異常な過重労働も野放し状態です。過労死や過労自死を生んだ事業所のうち90%以上が労基法に違反した働かせ方をしているという調査結果もあります(09年東京労働局調査)。また、総務省統計局の「労働力調査」によると、08年に週60時間以上(週20時間以上の時間外!)働いた労働者は約10%で、30代男性では20%が該当するという長時間労働の実態があります。さらに、非正規労働などの低賃金をカバーするためにダブルワークやトリプルワークが増加しています。

休憩時間もまともに取れず、有給休暇も使えず、長時間の過重労働にさらされ、身も心もくたくた状態の労働者が激増しているのです。

3)深刻な自殺大国の実態とメンタルヘルス不全の深刻化

警察庁発表の2010年の自殺者数は31,690人で、13年連続で3万人以上が自ら命を絶っています。13年間で422,389人が自殺をしているのです。いくつかの自治体が無くなってしまうほどの膨大な数です。

しかも27%が被雇用者、8.6%が自営業者、31.6%の人が「生活苦・経済問題と勤務上の問題」が原因、35~54歳では「無職者」の自殺率が「有職者」の5倍、20~30代の自殺者が急増という事実を考えると、極めて憂慮すべき事態が広がっていると考えざるをえません。

厚労省の患者調査によると気分障害(大半がうつ病)患者数が1996年の43万人から02年71万人、08年104万人と激増しています。09年には精神疾患による労災申請が初めて脳心疾患の申請を上回り、1,000人を超えています。

成果主義賃金、長時間労働やハラスメントを背景として「うつ病」が急増していることは深刻な事態です。産業カウンセラー協会の「経済危機と職場の現状に関するアンケート」(09年5月)では、「メンタルヘルス不調者の増加」が70.6%、「職場のモチベーションの低下」66.9%、「職場の人間関係の悪化」が50.0%、「パワハラの増加」が37.5%などとなっており、深刻な経済危機が働くものの健康にも悪影響を及ぼしていることが明らかになっています。

4)アスベストによる健康被害

厚労省報告によると労災保険の石綿による疾病に係る保険給付の請求件数は09年度は1,176件で前年比-11.3%です。労災保険給付の支給決定件数も1,073件で前年比-3.8%、石綿救済法による特別遺族給付金の支給決定件数も100件で前年比-17.4%と大幅に減少しています。

石綿に起因する中皮腫で亡くなった人は1979年から2008年までで13,286人います(人口動態調査)。そのうち2008年末までに労災補償を受けたのは3,064件、労災時効による石綿救済法による救済を受けたのが663件、石綿救済法による遺族給付を受けたのが2,280件ですから、政府の不十分な統計によっても半数以上の被災者が放置されたままになっているのです。

アスベストは1,000万トン輸入されその多くが建築物に使われました。建築物解体等による飛散防止は大きな課題ですが、その対策は遅れていると言わざるを得ません。大量に使用されたアスベストの除去・廃棄、アスベスト含有建築物等の解体が今後急速に進んでいきます。すでに再生採石からもアスベストが検出されており、建設廃材の処分についても厳格な監視体制が求められています。

3.11大震災の被災地におけるがれき撤去作業などで、作業に当たる人々だけでなく近隣住民も含めアスベストや有害物質による健康破壊が懸念されていますし、震災関連死やメンタル不全も深刻化しています。政府・自治体・企業などに対し、作業員、支援者、ボランティアに対する有害物質対策やメンタルヘルス対策を含む健康管理、避難者の環境改善など、総合的な対策を求める必要があります。

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